■雫野 4
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ちいさなかわは、みずがふえて、くもりぞらをぼんやりうつしていた。
わたってから、にぎられたてに、ちからがこもった。
おれはみあげる。
…にんげんのむらにはいりました。
そろそろ、おしばいをはじめましょうか。
さいごのつぶやきのあと、つめたいてがはなれていく。
ものかげからざわめきがおこって、あしをとめた。
いつのまにか、にんげんがたくさん、
とおまきにしてにらんでいた。
みんながおこっているのをびりびりかんじて、
こわいとおもった。
…こおにが2ひきいるぞ。
…ひるまっからどうどうと。
…ずうずうしいにもほどがある。
…こらしめてやれ。
しっかりとあたまをあげてにらみかえすそのこは、
まるでこわがってなんかいなかった、
なにかをすとんとかくごしたように、おだやかなこころは、
いまにもすきとおってきえてしまいそうだった。
もういちどそのてをつかもうとしたらふりはらわれた。
…さっさとこいつらぶちのめすぞ。
そのとき、にんげんがぼうをふりおろしてきた、
そのこは、それをかわしてつきとばした。
そのすきにつっこんできた、
べつのにんげんもけりあげた、
にんげんはみんな、すごくおびえた、
こわがりなんだ、おれとおなじだ。
でもこわがりのにんげんはまたなんにんも、
やけくそみたいになっておそいかかってきた、
こわくなってみをよせたら、つきとばされた。
うまれてはじめてしりもちをついて、おもった、
これが、おにのちからなんだ。
おれたちの、のろわしいちから。
…びびってるんじゃねえよ。
てはずどおりにやれ。
つめたくうなるそのこは、でも
やっとおれをみた、しんけんなめだった、
てはずって、
だって、
ことばがでてこない。
つめたくうなる、かれのことばは、
のはらできいたやさしいこえとはちがう、おしばいだった、
はやく、のはらにかえりたいとおもった。
…いいぐあいになかまわれしてるぞ。
…2ひきともつかまえて、かまゆでにしてくっちまえ。
なんておそろしいことをいうんだろう、
こわくてくちがきけなかった。
なんでこんなところにきちゃったんだろう。
…こおにめ。
たくさんのにんげんがおれのまわりにもあつまってきた、
あのこをひとかげに、みうしなってしまう、
きがついたらてをのばしていた。
めのまえにいたにんげんをよこにおしたら、
あっけなく、よこによろけた。
へんにてごたえがあって、おれはびっくりした、
でも、すこしだけぎんいろのかみがみえたから、
べつなにんげんのかたもおしたら、
うわあああといってしりもちをついた。
やっとみつけたそのこは、
にんげんにうでをつかまれて、ひざをついた、
べつのだれかにけられて、せきこんだ。
またつきとばされてもいい、
たすけられるのはおれだけだ、そうおもった。
…やめて、ひどいことしないで。
かさをほうりだし、
そのこにしがみついてぎゅっとめをとじた。
…なにしてるんですか、はやく、おれをなぐって。
みみもとでささやく、
そんなこと。
そのとき。
…やめてやったら?
こえがした。
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