■雫野 2
--------------------------------------------------------------------------------
のはらへと、あるいてかえる、
じぶんへのばつみたいにぬれながら、
いま、おれのてにはにんげんのかさがある。
にんげんのすがたのあしはおもたい、
ひとりぼっちのおれがいてもいいばしょは、
だれもこないはずの、のはらだけ。
なのに、のはらのまんなかには、また、
みしらぬおとこのこが、なにかまつようにたっていた、
でも、こんどのこは、にんげんではなかった。
ぬれそぼったぎんいろのかみに、
ふたつとがった、ちいさなつの。
さがしていたものをみつけたようにおれをみつめて、
そのこはいった。
…おかえりなさい。
とうとう、あなたも。
はっとしてあたまにてをやる。
あしもとのぬかるみがつくるみずたまりに、
ゆがんでうつっている、あたまにてをやったおれ。
おれのあたまには、いつのまにかちいさなつのが。
…あなたがのはらをでていくのを、みてました。
にんげんのがきから、りゃくだつしたんですね。
おとこのこは、ちいさなおにだった。
ぎんのかみからしずくをおとして、
どうしてまぶしそうにそんなことをいうの。
あゆみよってきたそのこを、
もちあげたかさのしたにいれた。
きょうしゅくっす、とかいいながら、
すぐそばでにっこりした。
…まだあたらしいかさですね、
げきせんをくりひろげられたんすか?
なぜか、わかっているというように、
おにのおとこのこはやさしくうなづく。
…にんげんどものくつうとひめいは、
おれらおににはくんしょうっす。
きもちをきりかえたら、らくになりますよ。
おれはそのこをみあげた、
きもちをきりかえる?
なんだわかってるくせに。
…あのこは、これをおいて、ぬれてかえった。
…あれは、にんげんのすしやのばかむすこです、
むらいちばんのばかぢからですが、
なあに、おれのあいてではないっすけどね。
みせのかんぴょうをぬすんだときにでくわしたんで、
2どばかし、なげとばしてやったことがあります。
だいきらいです。
ちょっととくいそうだった、
あのおとこのこは、おれたちよりだいぶおおきい。
…つのがはえると、あのこになげとばされるの?
…いや、あなたがなげとばしてやればいいんですよ。
…おれ、そんなことできない。
おにのおとこのこは、びっくりしたようにおれをみおろした。
…おれは、ぬれてもよかったのに、
だっておれはにんげんじゃないから、なのに、あのこは。
これ、あのこにかえしたい。
…かえしたい?
あいつが、すきですか?
…すき?わからない。
つるりとほっぺたをしずくがおちた。
あめじゃない。
むねをしめつけられるような、こんなくるしさははじめて。
そのこはおれをみて、それからぷいとかさのそとにでた。
…まってまって、いってしまうの?
それなら、このかさをもっていって、
おれのせいで、だれかがぬれてかえるのは、
もういやなんだ。
…あなたはやっぱり、おれとはちがうものなんですね。
そのなきたいようなくるしいきもちは、きっとこいしいとよぶんです、
そして、いまはくるしいけどこいしいひととわらいあえたら、
ぎゃくにしあわせになるんです。
そういうそのこはどうみてもくるしそうにいった、
こいしい?しあわせ?まだわからない。
いまのおれに、わかるのは。
…おれもいま、
きみがさっきみたいにわらってくれないと、
くるしいきがするよ。
やっぱりそのひとはびっくりしたようにおれをみて、
そしてかおをあかくしたから、おれもすごくびっくりした。
next