■雫野 1




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ちいさなのはらを、しずかにときがながれていく。
あおいそらにしろいくもが、ながれていく、
おだやかなくりかえし、きっとえいえんに。
ときどきふれてみる、つちのつめたさに、
なにかをおもいだしそうで、
でもきっとおもいだすことはないだろう。
いつも、きがつけばねむりにさそわれてしまう。そして。


ひがかたむきかけるころ、
ちいさなけはいがちかづいてきて、
ふれていく、そっと、
まぶたがおもい、いつもいつもどうしても、
みうごきできないおれをすぐにとおりすぎて、
くろいもりへときえていって、つかまえられない、
いつからかよくしっているようなきがする、
のはらのきたのくろいもりにすんでいる、なにかを。


いつからかわからない、ずっとずっと、そんなふうに。
そんざいしてる、みたいだ。


あるひ、つめたいしずくにかおをたたかれて、めがさめた。
のはらに、とつぜんのあまつぶが、ふりそそいでいる。


いっぽんみちをきただれかのまなざしをかんじた、
くろいもりのおくからつづく、にんげんのあるくみちに。
おどろいたように、こちらをみおろして、わらった、
せのたかい、くろかみのおとこのこ、
くさむらから、なんどもみおくったことがあるけれど、
はじめてむけられたえがおに、
わけもなくむねのなかがざわつく。
なつかしい。というのかな。
あゆみよってきて、さしかけられた、とうめいなかさ、
みつめられているおれは、
ちいさなおとこのこのかたちをしていた。


かさをはさんで、
はんたいがわのかたはあめにぬれている、
あといっぽ、みをよせれば、
そんなことできない、
おもいにのどをふさがれたみたいにただうつむいて、
どろにぬれていくじぶんのすあしをみおろしてみちをあるくだけ。
どうしてなにもきかないの?


もうすぐ、ちいさなかわにかかるちいさなはし、
それをわたれば、にんげんのむら。
どちらからともなく、たちどまった、
そのかおを、みあげるゆうきなんかない、
おれはこのさきを、はいってはいけない、
わかっていた、
にんげんではないから。
てのなかに、ほそいじくをおしつけられた。
かさにぶつかるあめのむこうに、
あのせなかがちいさくなっていく。
にげるようにむらにかけこんで、
おれをふりかえりながら、おとこのこはなにかをさけんだ。


ちがうちがう、おれはなにもわるいことなんかしなかった、
ただ、ひきよせられるようにきれいなえがおにあらがえなくて、
あるいてきただけなのに。

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