「ハッピートリガー」



リボーン誕生会の後片付けがどうにか終わり、手伝ってくれた獄寺くんをねぎらっているところにひょいと本日の主役が顔を出した。

「よお、ツナに獄寺、今日はご苦労だったな。お前たちなりになかなか頑張ったみてえだから礼を言いに来たぞ」
黒炭のような瞳が微妙な輝きをみせているのをツナは直感したがゴミ袋を片手にした獄寺はツナ以外にはあまり見せないよい笑顔でリボーンの言葉を聴いている。

「あとちょっとしたらツナの奴も誕生日だったよな。そんな訳で礼がてらプレゼントをしてやろうというわけだ」
小さなヒットマンは黒衣の胸元に小さな手を差し込むとスッと鈍銀色の銃をとりだした。

「り、リボーン、また変なグッズとかだったらおれ要らないからっ!」
やっと片付いたリビングをめちゃくちゃにされてなるものかとツナは全身で拒否を示すのにリボーンはおおげさに溜め息をついてみせる。

「フン、要らないならそれでもいいけどな。獄寺、おまえにやろうと思ってたんだがどうする?これは不幸周波を幸福に変換する銃なんだぞ。大体ツナの奴は道を歩けばドブにはまる、階段を登れば落ちる、といった具合にカワイソウなダメライフだ、それを変換する可能性があるこの銃をお前は欲しくはないか?」

鈍銀を握る小さな手元とツナの顔を交互に眺め獄寺はやはり素晴らしい道具なのじゃないかと思いリボーンの提案にお願いしますと身を乗り出した。

「可能性があるって、わざわざいうことはだめかもしれないってことじゃん」
とりあえずツナは突っ込まずにはいられない。なんだよ、可哀そうなダメライフって。獄寺くんも獄寺くんだよ、おれってやっぱり不幸でかわいそうにみえてるんだな、いやほんとにそうだけどさー。
ツナの心の声は獄寺には届いていなかったようだ。

「まあ、そうだな。可能性があるってことはダメなままもあるってことだ。よく気づいたな、ツナ。褒めてやってもいいぞ」

(そんなんで褒められてもうれしくねーー)

「これはな、銃を撃つ人間の幸せを撃たれる側の人間に移動させることができるって代物なんだ」
ぽん、と手のひらを打ち獄寺は大きく頷いた。

「なるほど!ってことはオレの幸せを10代目に差し上げることができるんですねっ。素晴らしいです、リボーンさん。早速オレに試させてください」

「ああ、勿論だぞ。だけどな、さっきも言ったが必ずってわけじゃあねえ。なにしろ試作品だしな・・っと口が滑ったか。それに幸せを移動させるってことは獄寺、おまえの分をツナにやるってことだからな?よく考えろよ」

ツナにしか気づかないくらいの微笑を浮かべリボーンはくるりと銃を回転させた。

「構いません!オレのぶんの幸せが全部10代目に貰っていただけるんならそんな素晴らしい誕生日プレゼントはないかと思いますし」
ニコニコ頬を紅潮させる獄寺とは対照的にツナは顔をひきつらせて二人の間に割って入り声を荒げた。

「ちょ、だめだめだめー。それいらないから!そんなの獄寺くんがおれの不幸背負うようなもんだろ?やめようよ、おれ別に今のままでもいいよ!」

「いいえ、オレは全力で10代目をお祝いしたいんです。僭越ながらオレの幸せを受け取ってください、10代目!」

ためらうことなくトリガーが引かれ派手な破裂音とともに色とりどりの紙吹雪と風船が宙を舞う。


「10代目、お誕生日おめでとうございます!!」
「おめでとうだ、ツナ」
「う・・あ、ありがとう・・・」

眉毛を下げしかめっ面でモゴモゴ言うツナの手を取り獄寺はその甲に恭しくに額を当てた。

「ご・・・」
ツナに向きなおされた獄寺の顔はこれ以上ないほど笑み崩れ嬉しそうに言葉を繋いだ。
「10代目の幸せが全部オレの幸せなんですよ。これ以上の幸せはないんですよ」



パタリと扉が音を立て小さな後ろ姿が肩を竦めながらノブをまわした。

「ツナ、覚えとけ。しあわせってのは目減りしねえんだ。ふえるばっかりだ」


buon compleanno!!