「ブレッドオブボンゴレ」



空は高く白い雲が散りじりに青のかなたに広がっていた。

「ほんと腹減るよな、この頃」

山本が今までよりも一回り大きな弁当の包みを開けていう。

「うん、すっごい減るよねー。オレも弁当増やしてもらおうかなあ」

弁当箱の蓋にくっついた味海苔を剥がしながらツナが答えると獄寺が嬉々として茶色の紙袋を差し出した。

「10代目ーー、よかったらこれもお昼のタシにしてください!いっぱいあるんで」

「え?これ獄寺くんの昼ごはんじゃないの?悪いよ」

「いえいえ、マジいっぱいあるんです。10代目の血となり肉となるならこいつらも本望ですって!」

「いやいやいや、なんかそれ怖いから」

「んー?獄寺それあまってんの?ならオレも貰おうかなー」

のほほんと手を伸ばす山本にいつもなら罵声を飛ばす獄寺くんだが珍しく黙ったままどこからかもうひとつ紙袋を取り出した。

・・・どこから出してるんだろ?気にしない気にしなーい。

「物凄く特別にお前にもわけてやるから感謝しろ、野球バカ」

「おー、ありがとなー、感謝感謝・・ってなんだこりゃ?」

がさごそと袋を探った山本の指先には食パンが1斤ぶらさがる。

「なにってパンだろ、そんなこともわかんねえのか、野球バカ!」

「うん、パンなのは間違いないのな。でもこれそのまんまかー?ワイルドだな、はは」

「獄寺くん、今日は購買いかなかったんだ?」

ツナも自分に手渡された紙袋の中に食パン1斤を確認しつつ獄寺に尋ねた。

「あ、はい。ここんとこコレっすねー」

どうということもないというようにまたひとつ食パンを取り出す獄寺に山本と2人目を見張る。

「ゆうめいなお店の・・とか?」

「いえー、並盛スーパーっすよ。あ、10代目はジャムとマーガリンどっちがいいっすか?」

手品のようにジャムの壜とマーガリンが差し出されている。
このままだとトースターも出てくるのだろうか?どうなってるの、獄寺くんの服の中。気にしなーい、きにしなーい、気にしちゃいけないー。


午後の授業も終わり連れ立っての帰り道。

「あ、10代目。申し訳ないんですけどオレ公園に寄ってきますので」

「うん、わかったー。じゃあまた明日ねー」

公園に寄って何するつもりなのかちょっと興味があったけど女子との待ち合わせ(は、たぶんありえないけど)とか怖いヒトとの果し合いだったりとかしたらイヤだしなー。

ちらりと振り返るとベンチに座って食パンをちぎる獄寺くんがみえた。

まだ食パンあったんだ。

足元に沢山の鳩が集まってきているようだ。

ひょっとして鳩に餌付けしてるのだろうか。

それともやっぱり誰かを待っているのかな、ってオレなにやってんだろ、こんなとこで。

もう帰ろうと歩き出した途端にスパーンと破裂音がして思わず悲鳴を上げてしまった。

「ひゃっ!!」

と、猛ダッシュで獄寺くんが走りよってきて「どうしましたか、大丈夫ですか、敵ですか、果たしますか?」と矢継ぎ早に吼えたてた。

「あー、獄寺くん、今なんか破裂するみたいな音がしてさあ」

なんのことはない、空になった食パンの空き袋を獄寺が膨らませて割っただけのことだった。

「ええ?どこぞの鉄砲玉っスかね?オレすぐに気づかなくて申し訳ありません。こんなことならしっかりお送りすれば・・」

土下座しそうな勢いなのを慌てて止める。こんな往来であれをされるほうが居たたまれない。

「いいよ、謝る必要ないから。さっさと帰らなかったオレが悪いし」

「?」

「や、獄寺くん公園で何するのかなあとかちょっと気になってさあ」

ぱぱあと外気に触れていない獄寺の耳は熱くなる。

「き、気にして下さるなんて・・光栄です!」

喜ばれるとちょっと心外なんだけどもね、だって獄寺くんはいつだってなにしでかすかわかんないし気になるんだけど。

「用事はだいじょうぶなの?オレ邪魔しちゃったんじゃない?」

もじもじもじ。

「はい、つまんねー用事なんでもう済みましたから」

「えーと、もしかしてもしかすると鳩のごはん?」

「うわっ。流石10代目シブイっす。なんでもお見通しなんですね」

そんなに感心するほどの推理じゃないと思うけどどうやらホントに獄寺くんは鳩に餌をやるために公園に寄ってたらしい。

「10代目ー、あともうちょっとなんすよー」

「なにがもうちょっとなの?」

鳩が意のままに操れるようにとかそんなことだったらどうしよう。どうもしないけど。

「明後日あたりにはおかあさまを喜ばせて差し上げられますよー」

ニカッ★

「なんで母さん??は、鳩の手品でもするつもりなの?」

獄寺くん手品スキだからなあ、どうしよう。またボンゴレ式出し物だったら・・そういえばそろそろリボーンの誕生会?ええーー。

「いいえ、手品じゃないです。ほら、10代目コレですよ」

ポケットから出される小さな紙のようなもの。

これは、えーと。

「並盛製パン白い白いお皿フェステバル・・ってなにこれ」

「はい。10代目のおかあさまが集めてらっしゃるんですよ。食パンについてくるんです。もう少しで10枚分たまるんですよ」

「ひょっとしてここんとこ食パンなのはそのせいなの」

「そーなんですよ。さすがにちょっと自分だけじゃきついかなと鳩にも手伝って貰ってるんでけどね」

と、いうか皿を買ったほうが断然早いと思うんだけど、なんか凄い嬉しそうだな。

「ダブル賞で並盛ランドのペア券も当たるんですよー。10代目一緒に行けるといいですねーvvオレ神社にお百度踏みにいって・・あ、これは内緒で、えーとえーと」

うわー、そっちメインなのかよ獄寺くんという軽いショックは胸のうちにしまって。

「あー、うんうん。きっと母さん喜ぶと思うよ。ありがとうね」

「そんな。10代目にまで御礼を言ってもらうなんて。そうか10代目にも使っていただけることになるんですね、皿」


それから数日後白い皿に載せられたトーストを齧りながら「10代目ー、オレもお揃いの皿で嬉しいっすー」と叫ぶ獄寺を宥めるのに苦労するツナだった。


「それ全国的にお揃いだから~~」



(おわる)