「今日は何の日?」
「10代目、今日は何の日かご存知ですか?」
獄寺くんが畏まった調子で尋ねるものだから、ちょっとだけ悪戯したくなってわざと違ってそうなこと言ってみた。
「えーと、九月九日だろ?くく・・掛け算の日?」
にっこり笑って首を振る獄寺くん。
「チョロQの日だっけ?あ、そうだ、フライドチキンの安くなる日だよ、うんうん。そうだ、一緒にチキン買いに行かない?オレ小遣い出たばっかりだから奢るしさ」
実際みんなでパーティーを計画していたしチキン一緒に買うなんていいかも。
なのに。
「流石、10代目。博識でいらっしゃいますね。渋いっス!でもですね、実は他にもあるんですよ、今日という日には」
えー。
「えっとですね、本日は救急の日です!」
はああ?なぜにそこに。
「ですのでオレと一緒に訓練しましょう、10代目。マフィアに応急処置は必須ですよ。備えあれば憂いなしです」
心なしか目が輝いてやしませんか、獄寺くん?
「えーと10代目が施術者になりますか?それともオレがいいですか」
「いやいや、しゅじゅつって・・無理無理、それ無理だから」
なんで手術、なんの手術?改造人間・・ショッカー??
「違いますよ、10代目。手術じゃなくてシジュツです。技をみせるほうっす。そうですね、やっぱり10代目にして頂くのがいいっすよね。何事も実践ですから」
そういってぱたんと床に仰向けになってしまった。どうしてこんなことになっちゃうんだろう。
「さあ、10代目、まずは息してるか確認っス。」
こうなっちゃうと止められないんだよなあ・・流されるままに獄寺くんの脇にしゃがんで呼吸の確認・・・って鼻息荒いよ、獄寺くん。
そんなハアハアしないでーー。
「・・い、息してるみたいだよ・・」
「そしたら意識があるかを確認です。・・名前、呼んでください(ぽ)耳元にゆっくりはっきりとお願いします」
え、なんかポッって音きこえましたか?きこえませんでしたか?
「ご、獄寺くん。ごーくーでーらーくーん」
耳元で名前呼ぶのなんてもしかしなくてもはじめてかも。
あれ、なんか獄寺くんの顔赤くなってない?
「10代目ーー、きこえますーー」
嬉しそうに答えてるよ、そりゃきこえるだろ。ねー、これ意味あるの?
「じゃ、服緩めてください。ボタンとかベルトとか」
「うええええ?いいよ、それ覚えとくから。やったことにしといてよ」
「そうですかー?一通りやったほうが身につくと思うんですけども。まあ他にも予定つまってますもんね。じゃあ早速人工呼吸いきましょうか?」
はいーーー?なんかオレそろそろ本気で断ったほうがいいのかな。
「10代目ー、マウストゥマウスはご存知ですか?」
爽やかに言いながらなんか指先もじもじしてるのは何故なの獄寺くん。
まうすつーまうすってのはさ、あれだよね、あれ。うんオレもテレビとかでみたことあるよ。あれをやれっての?本気で?
「・・うん。知ってる、ってかやったことないけどさ、獄寺くん本気?」
「え?」
身をかがめて獄寺君の頭の後ろに左手を差し込んで顔を見合わせる。
獄寺君が耐え切れなかったのか僅かに目をそらしたのでなんだか勝ったような気分になった。
そして。
思いっきり鼻をつまんで引っ張ってやった。
「はい、今日の講習はおしまい。まうすつーまうすってさ、鼻をつまむのが最大ポイントってなんかでみたんだ。だからもういいよね?」
ちょっぴりしょぼんとした姿に手のひらをとってゴシゴシ擦ってやる。
「ほら意識戻った?こうやって刺激するのもいいらしいんだって。」
右手とオレの顔を交互に見比べてる獄寺くんをぎゅっと抱きしめる。
「お誕生日、おめでとう!獄寺くん。」
「10代目・・」
「ごめんね、ほんとはすぐにお祝いしたかったんだよ。おめでとう」
ぎゅうぎゅうぎゅう。
「10代目ーーー、オレ心臓止まりそうっす!」
頼む、頼むから止まんないで。救急法はもう十分だからー。
おわり
・カゼビア(無駄知識):ここにのっけた救急法は割と正しいはずですが役に立つかは不明。笑。備えあれば憂い梨。講習等受けると意外なときに助かると思います。