「めりくる」
寒さが増し日の落ちるのはあっという間になったが、このところ街全体が明るく光っているような気がする。
商店街のショーウィンドのみならず街路樹や民家の門扉や外壁、いたるところがピカピカと電飾を掲げていた。
「クリスマスだなあ」
イルミネーションの渦とクリスマスを盛り上げる音の波にツナの心も自然と高揚した。
ツナの家にもささやかではあるがクリスマスツリーが用意され母の奈々と一緒にランボやイーピン、フゥ太が飾り付けを手伝っていた。
ビアンキとハルがタッグを組んでケーキを作っているというあたりに恐怖を感じないでもないが、奈々も一緒なのでどうにかなるだろう。
鼻ヒゲメガネやらクラッカー、三角帽子なんかの盛り上げグッズも揃えて明日には竹寿司からもお寿司が届くらしい。
ツリーの飾り付けをしながら小競り合いをするチビたちの仲裁をしたりテレビゲームをしたりして前夜祭、いわゆるクリスマスイヴってことで買ってきたフライドチキンなどを食べ、明日も楽しいといいなあとツナは布団に潜りかけた。
あ、そうだった。
ふと思いだして箪笥の引出しから靴下を引っ張り出して枕元に置く。
ノートの切れ端に殴り書きでサンタさんよろしくとメモをつけ、一呼吸迷ってからサッシ窓の鍵を外した。
ツナがもっと小さい頃、うちには煙突がなくてサンタさんが来てくれないとべそをかくのを奈々が「二階の窓を開けておいたら大丈夫よ」と教えて以来クリスマスの夜にはそっと窓を開けていたのだ。
防犯上どうだろうとも思うが実際のところは朝になる前に奈々が閉めていたのだろう。
「これでよし」
ベッドライトの小さい明りを残してツナは今度こそ布団に入った。
やがてツナがスースーと寝息を立て始めたところへカタカタと音をたててサッシ窓が開けられた。
赤い帽子に白いフリンジ、赤いボアのコート。白いフリンジからは銀色の髪が揺れている。
「10代目、おじゃましまーす」
小声で言いながら一礼し怪しいサンタ装束の輩はツナの部屋に侵入した。
はー、寝顔もシブイっす、10代目!!
拳を握り締めながらひとしきりツナの寝姿を検分するうち獄寺はその枕元にあるものに気がついた。
サンタさんへ、のメモ書きのしたにある縞の靴下。
こ、これは10代目からの贈り物っすか?ご愛用の靴下ですか?
流石、10代目っす、サンタにもお心遣いを忘れないでいらっしゃる!
スハーっと鼻先に押し当てその感触を堪能する。
ああ10代目のお宅の洗剤の匂いがします、やさしい気持ちになるっす!
浮かれながら持参した布袋から精魂こめて作った10代目専用右腕枕過剰包装済み、をベッドサイドに置いた。
いやあ、それにしても昨日徹夜してこれつくったから眠いし10代目はいい匂いだし・・ちょっとだけならいいっすよね?
勝手な理由をつけて怪しいサンタはツナの隣に潜りこみ幸せな気持ちで靴下を抱きしめながら眠りについた。
早朝のクリスマスに阿鼻叫喚が響き渡るまでの数時間、聖なる夜はやさしく街を包むのだった。
メリーメリークリスマス★
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中途半端に生温いのはクリスマスに仏心を出して獄寺をむごい目に遭わせられなかった私のせいですprz