「距離」
暖かいところででも話はできるだろというのを説き伏せて真夜中の空の下にいる。
影も色を映さない闇をかき分けるように枯れ草を踏みつけて先を促す。
右手のカンテラに気を取られるように下ばかりみている沢田は、頭上で瞬く星にさほど興味は持たない様子だった。
緩やかな勾配をあがった先に割と平らな場所がありブランケットに並んで腰をおろした。
「ねえ、ツナ兄。星が綺麗なんだよ?」
カンテラをどうやったら水平に置くことが出来るかと試行錯誤している沢田の顔を覗き込むようにしてフゥ太は声をかける。
「ああ、ほんとだねえ。久しぶりにみたかも、こんなにいっぱいの星は」
「うん。今日みたいな日は星の声も聞こえやすいんだよ。空気が澄んでるからいつも見えないような星もみえるよ」
「ふうん。ランキングの星とかもみえるのかなー。」
いつも沢山のひとに囲まれて賑やかにしているこのひとにとって僕は何等星ぐらいの星なのかな。
ランキング星と交信・・・・は、しない。
「これだけ多いとほんと降ってきそうだね、あれなんてすぐ手が届きそうだ」
そういって伸ばされた指先を無意識に握りしめフゥ太は自分に向けた。
隣り合っているあの星たちは近いようにみえてそれぞれは遠く離れているし、勿論手を伸ばして届く距離じゃあない。
僕とツナ兄は隣り合わせでこうやって体温さえ知ることが出来るけれど。
「僕にならすぐ手が届くよ、ツナ兄」
そう云いたかったけれど黙って吐く息と一緒に飲み込んだ。
ふッ、と小さなため息のような笑い声をたてて沢田はフゥ太の空いている方の手をとり掴まれたままの自分の指先と
フゥ太の指先を合わせる。
「E・T」
怪訝な顔のフゥ太の頭をくしゃりとかき回し沢田はのんびりと云うのだった。
「なあフゥ太、おれ映画観たくなっちゃった。戻ってあったかいもの飲みながら一緒に観ようよ。
自転車で2人乗りなとことかすっげー感動するんだよ?」
ツナ兄との2人乗りも悪くないと沢田の背中に頭を押しつけながら思ったフゥ太が、その2人乗りは
前籠の中+一人だと知るのはもう少し後の話。
Fin