「花に蝶、罪に罰」


昼下がりのオープンカフェの白いテーブルに頬杖をつく女の元へ薔薇の花を抱えた不精髭の男がステップを踏むように足を運ぶ。


「ビアンキちゃん、今ここで会えたのはやっぱり運命だったんだねえ」

ビアンキは綺麗な形の眉をほんのすこし持ち上げてアイスラテのグラスを男に差し出してやった。

「そうねシャマル、運命というのはいつだって過酷なものよね。折角だからお茶を差し上げてもいいわよ?」

ワインカラーのネイルの先から不審な靄を発生させながら三日月形に唇を引き上げてわらう。


ブショワアア。ラテのグラスはボコボコと泡を幾層にも噴き上げてみるみるその色を変えていく。


「ビアンキちゅわあん、そういう運命は出来れば遠慮したいんだけど」

シャマルはふざけたように身体をくねらせながら、けれどさりげなくグラスをかわし淡いピンクの蕾を一輪ビアンキの髪に挿した。

「美しいってことは罪だね。俺みたいな恋の狩人を大量に作り出す。そして俺が捕まえてたくさんの未熟な狩人どもと可愛い迷い子たちをガッカリさせるんだ」
テーブルにもたれるようにしながらぐいとビアンキに顔を近づけ左目を瞑ってみせた。


「ばかばかしい」

あからさまに顔を大きくシャマルから背けてビアンキは吐き捨てるように言った。

「でも美しいことが罪だっていうなら十分罰を受けているわ。あなたみたいな男とこうやって話をしているってことだけで十分すぎるほど苦痛だわ」

すくりと立ち上がると髪にささった一輪をシャマルの着崩したスーツの襟元から落としてそのまま歩きだす。

「花に罪はないというけれど、花も美しいことが罪だとするのなら罰を与えられてしまったのね。かわいそうなこ」

後を追う間を与えず流れるように肘打ちをくれてやりビアンキは愛のために次の町に向かった。


サクランボが食べたいという愛しいあのひとが待っているのだ。
いつまでも立ち止まっている場合ではないのである。



おわり