'O sole mio











「10代目。あまりにもみっともないんで云わないで済ませたかったんですが」

ザ・土下座の体勢からゆっくり顔を挙げ不本意ながらの首筋から耳の先まで紅く染めた獄寺くんが意を決した表情で口を開いた。

「さっきのはその、申し訳ありませんでした。10代目オレじゃない誰かのことで凄く幸せな笑顔になってましたよね?
それでついオレが隣にいない貴方の幸せについて考えちまってました。きっとこの日本の湿度のせいでジメジメなセンチメンタリズムにやられたんっす。
あの、改めて誓わせてください。10代目、あなたにどこまでもついていきます。ずっと、いつまでも一緒です。なんなりとお申し付けください」」

今度は片膝をついて騎士のポーズでおれの手をとる獄寺くんの耳にフーっと息を吹きかけてやってその反応に笑うなんておれも随分エラくなったものだ。でもね獄寺くん、このジメジメのおセンチじゃっぽーねでおれは鍛えられたのだと思う。

「うん、獄寺くんニアピンぐらいに当たってたかも。おれね、京子ちゃんにツナくんって呼ばれたときのこと考えてたんだ。あの頃のおれをダメツナ以外で呼ぶひとってほとんどいなかったし凄く嬉しかったんだよね。あ、そういえば。今周りでおれのことツナくんって呼ぶ人っていないんじゃない?よかったら獄寺くんが呼んでみたりしない?」

「え?オレが10代目のことをですか?んーー、本気でお望みなら考えますけど」

もぞもぞと動く口の形におれは充分愉快になった。いいんだ、君はそのまま君の呼び方でおれを呼んだらいい。


「それじゃ、そろそろ始めに行こうか。あんまり遅くなるといつ雲雀さんが乗り込んでくるとも限らないし」

並中に住んでいるのじゃないかとまで噂のあった雲雀さんだ。今でも並盛全域を密かに管理し続けているらしい。
冗談のつもりではあっても神出鬼没、ほんとうに乗り込んでこられたら今日の計画は失敗する確率100%だ。

「ですね、リスクはできるだけ少ないほうがいいです。オレも10代目との約束に邪魔が入るのは許せませんから」

云いながら膝の土ぼこりをはらいスーツの上着に手を差し入れて懐かしいあれを取り出した。
ダイナマイトをまるでトランプのカードみたいに片手にぱっと広げてウインクを寄越す。懐かしいには懐かしいけれど使うとなれば話は別だ。

「それ、しまっておいてね。お願いだから」
「えーーっ。なんでですかあ、10だいめえ。折角の記念なんですから是非ともこれをと準備に準備を重ねてきたんですよ。ほら、10代目の分もたっぷりあります」

記憶力のいい獄寺くんのことだから再現度もあげているんだろうと想像してみれば校庭の大惨事があっさり目に浮かぶ。

「獄寺くん、おれもいい物持ってきたんだよ。君の分も持ってきたんだ。だからこれで一緒に探そう」

中学を卒業する間際にみんなでタイムカプセルを埋めたのだけど、それとは別におれと獄寺くんはもうひとつのカプセルを用意して10年経ったらふたりでみつけに来ようと約束したのだ。
入れ子構造のカプセルにはそれぞれ未来の自分達に向けて思い思いの物を封入してある。
そのときお互いが近くにいてもいなくても必ずみつけに来ようと決めたのが今日この日だった。

「10代目、そいつは!」
「うん。超秘密兵器。これを使えばらくらく発見!のはず。たぶんね」

先端を直角に折り曲げた棒状の秘密兵器を獄寺くんにも渡してやれば小さな子供かというほど目を輝かせて検分している。
10年前はレオンに力を借りたけど今日のために技術部に頼み込んでダウジングロッドを作ってもらったのだ。

「おれ、ひょっとしたら地脈から温泉みつけちゃうかもね。並中に温泉湧いちゃったりするかも」

獄寺くんは両手に持ったL字型のロッドを掲げながら大声で叫んだ。

「さすがです、シブイです10代目!お見逸れしました~~!!」



ふたり出逢えて本当によかった。この先何があっても一緒に乗り越えていけたらいい。

迷うことなく歩みを進める獄寺くんの向かうフェンスの脇では槿の白い花が気持ち良さそうに揺れていた。




FIN  ~お見逸れ記念日に寄せて。

途々さんと獄つなーさんに愛をこめて。

ASAP獄ツナ最速ハッピーエンド企画にお誘いいただき楽しませていただきました。 期間満了に伴いこちらに収納いたしました。じれったい二人も勿論ダイスキですが光速ハッピーエンドもダイスキです。これからも幸せな獄ツナを愛でて生きたい所存です。