出来あがったお団子を獄寺君は一つ一つ品定めしながら硝子の器によそってく。
大きいのはこっち、小さいのはあっち。丸いのはこっち、ひしゃげたのはあっち
。まるで、どこぞの子牛みたいな判定基準で、でも結構集中しているみたいだからジャマもできなくて。
オレはただただ、獄寺君の背後にべったりひっついて、その肩越しから、白玉団子のグループ分けを見守っているばかり。
形なんて食べちゃえば同じことだよ。何度、言ってやろうと思ったことか。そう口にしないのは、獄寺君の反論が手に取るように想像できたのと、白玉を選り分ける仕草が、なんというか…綺麗だったからだ。職人業って感じで。
すべてはオレのため。本日最大級の自惚れに、いろんな意味でため息がでて、繊細な銀糸をゆらす。 獄寺君はわずかに肩をふるわせ、小さくこちらを振り向き、
「もう少しでできますからね」と控えめに言った。
真っ白なうなじと、たまに見え隠れする耳たぶまでもが淡く色付いて、燻っていた悪戯心がムクムクとふくれあがる。 オレはますます、仕事人な背中にべったりもたれかかり、がっちりした肩に顎をのっけた。
「もう少しって、どのくらいですかー?」
「あと少しで終わりますので…!」
まるで小学生の質問なのに、かえってきたのは、かわいそうなくらい律儀に慌てた答えで、それが、いけなかったんだと思う。 もうガマンできませんよー、頬を首筋にうりうり擦りつけて、小学生は調子に乗った。
「おなか空いたよー」
「もうじきっすから…!」
職人の手捌きは早くなった。
「飢えじにするー」
「あと3つで終わりますから!」
職人の審美眼は封殺された。
「ガマンできないー」
「これで最後っ…」
でも、我慢できないのだ。
いい加減、団子ばっか見ないでこっちを見てくれ。
「10代目っ、ほら出来ましたよ!美味しい団っ…!」
獄寺君が終わるのを待たず、オレはとうとう団子を口にしてしまった。目の前で
チラチラ見え隠れしていた、あのさくら色のやつだ。 くちびるの乾いたとこで挟んで、二、三度、噛むふうに力をこめる。やらかい。団子のやわらかさ。
舌先で、ちょんと突っつけば団子、じゃなかった、耳たぶは震えてオレの口から逃げてった。
「なんって事するんスか!」
耳もとを押さえて狼狽える職人さんには悪いが、白玉団子より、こっちのがいい。 もっと味わっとけば良かったと心底、思っていると、目の前に影が差し、両肩をがっちり捉えられる。 しかも、あろうことに壁ぎわまで追い詰められ、見上げた先の、朱に染まった顔と潤んだ眼差しで、ようやく、調子に乗りすぎたことを悟った。
「10代目…、オレだって腹空かしてるんですよ…?」
「……そ、そっかー!」
顔の近さと、しでかした事への羞恥で、さくら色どころの騒ぎじゃないだろう。
燃えるような熱さのせいで、白玉団子はおあずけとなった。
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