| 『アンチョルメ』 カランと渇いた音が響いた。床の上にフォークが落ちたのだ。口に運ぶものだから拾わなきゃ。理性は訴えかけるのに身動きが取れない。君のせいだ。抱きよせられたら敵わない。火照った腕に拘束されて、熱っぽい眼差しに瞳の自由が奪われる。オレの体はとっくにあきらめていて、ゆっくりゆっくり仰向けに転がされた。真っ白な天井を背にして君は、オレの頬にそっと手を添え、浅く柔いキスをした。触れるか触れないかの微かさで唇に、頬に、やがて耳たぶを掠めて、首筋を軽く啄ばんだ。チュッて音と感覚が体の奥を駆けぬけて、思わずギュッて目をつむる。キスの嵐に息を殺して、止まない音に耳を澄ます。衣擦れの音がしだす。腹に直接、熱いのが触れた。熱い手のひら、はじめは遠慮がちなのに、ゆっくり確実に這い回る。胸まで伸びる。「あ…」弾かれた拍子に声が漏れた。反射的に口を手でふさいだら、髪の毛をやさしく掻きあげられて、「声、抑えちゃダメっスよ」耳に直接、吹き込まれた吐息。体の力がクタクタと抜けて、オレの手はあっさり取り外される。おそるおそる目を開けたら、嬉しそうに覗き込まれていた。「生まれて初めて毎日が誕生日ならいいなって思いました」至上の笑みを零した獄寺君は、露になった腹の上にキスの雨あられ。そんなんじゃ身が持たないって言ってやろうと思ったのに、声が震えそうで言えなかった。 |
